四季から二季へ ― 崩れる季節のリズム ―
日本といえば、春夏秋冬の四季の移ろいを繊細に感じられる国として知られてきました。桜の花が春を告げ、蝉の声とともに夏が始まり、紅葉が深まると秋を迎え、やがて雪が舞う冬がやってきます。しかし近年、この美しい季節のリズムが崩れつつあります。気候変動の影響により、四季の感覚が「二季」へと単純化してきているのです。
たとえば2024年、東京では4月中旬に一時的に真夏日に近い気温となる日があったかと思えば、11月には初雪の知らせが届く前に10月下旬から急激に冷え込み、秋をほとんど感じることができませんでした。こうした極端な気温変動について、気象庁も「季節の消失」として警告を発しています。
この変化は、感性の問題にとどまりません。農業や漁業への影響は深刻です。稲作における生育不良や、旬の魚の漁獲量の変動、果物の収穫時期の前倒しなど、一次産業は四季のリズムに大きく依存しているため、私たちの生活や経済に直接的な影響を及ぼしています。
また、私たちの健康にも悪影響を与えています。春や秋のような過ごしやすい季節が短くなることで、急激な気温差に体がついていけず、自律神経の乱れや熱中症・低体温症などのリスクが高まっています。特に高齢者にとっては、命にかかわる問題です。
一方で、企業や自治体の対策も進んでいます。「暑熱順化(しょねつじゅんか)」という概念が注目されており、早めに暑さに慣れる生活習慣を取り入れることが推奨されています。衣替えのタイミングも、固定的な日付ではなく、実際の気温に合わせて柔軟に変えることが求められています。
四季が崩れ「二季」になるというのは、単なる自然の変化ではなく、私たちの暮らし方、働き方、感じ方すべてに影響を与える重大な転換点です。これからは、変わりゆく季節に合わせて柔軟に行動し、気候と共生する知恵がますます重要になっていくでしょう。今こそ、私たち一人ひとりが「季節」とどう向き合うかを問い直すときです。

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